WINTER 24 COLLECTION

「服にとっての、冬という季節の意味を深掘りしていたんです。」スタジオニコルソンのファウンダーで、クリエイティブディレクターのニック・ウェイクマンは言います。「それは突き詰めると、アウターやニットの存在そのものや、冬の季節にふさわしい多様な質感の可能性、そして生地の耐久性について思考を巡らせていたということですね」。ウェイクマンのイメージボードには、90年代に活躍した俳優らのピンナップがずらりと並びます。そこには、チェック柄のシャツに千鳥格子のテーラードコートを合わせたミシェル・ファイファーや、マニッシュなオーバーコートを羽織り、その手にブランケットを握りしめたキム・ベイシンガーらの眼差しが連なります。オータムシーズンに続き、今シーズンもガス・ヴァン・サントの写真集『108 Portraits』を参考にしたと言うウェイクマン。リヴァー・フェニックスへのオマージュとして組まれたのは、メンズで展開する格子柄のコットンシャツRayです。
今季のコレクションを通して、ウェイクマンが注目したのは、デザイナーのマルタン・マルジェラや建築家の安藤忠雄のつくる、世界観や人物像。「安藤忠雄さんは繰り返し私のムードボードに挙がってくる人です。」常に先を行き、強いビジョンを押し進める安藤忠雄。その安藤と彼が率いるチームが並ぶ、1989年に撮影された写真を指しながら、ウェイクマンは微笑みます。「彼のチームは皆、無駄を省いたとても本質的な着こなしをしていて、私はそれが好きなんです。誰一人同じ格好をしていないのに、全体を取り巻くムードはとてもシンプルにまとまっています。これはまさに、スタジオニコルソンを手にとった際に、皆さんに感じとってほしい空気感なんです」。
 
24年ウィンターコレクションでウェイクマンが特に注目するべき素材のひとつとして挙げるのが、メンズ、レディース双方のコレクションで登場したチェック柄のダブルコットン素材。「この素材でガーメントを組むと、とてもパワフルなフォルムが生み出されるんです。」とウェイクマンは言います。今シーズンのフォルムやシルエットに注目してみると、この素材が主役のレディースのオーバーコートDenaliはウエストのベルトで引き締められ、独特な存在感を放っています。同様にメンズのオーバーコートBrookeやブレザーのSlipも、ウェイクマンによれば「スタジオニコルソンらしいボリューム感を保ちながら、同時にシャープで構築的な仕上がりになっていて」、今シーズンらしさが打ち出されています。
「服にとっての、冬という季節の意味を深掘りしていたんです。」
24ウィンターコレクションのもうひとつの要となる素材は、ユニセックス使いが新鮮な、撥水加工が施された光沢感のある高性能ポリエステルです。「これは私たちがこだわった、1970年代のスキーウェアを意識した素材です。」とウェイクマンは言います。「巷に溢れるダウンジャケットは退屈なものばかりで、私たちはそこに一石を投じる意味で、何か特別な視点を持ったダウンジャケットを作りたかったんです。その特別な視点が「シャイニー」です。取り入れたのはただの光る素材ではなく、美しく光る素材です。」ウェイクマンはまた、デザインの細かいディテールにもこだわりました。レディースのフード付きジャケットDanaの背中を覆うカウボーイ・ヨークや、メンズのダウンジャケットLoftのかさばらない程度にゆとりのある絶妙なシェイプなど、そのこだわりは随所に散りばめられています。スタジオニコルソンのシグネチャーピースとも言える、肩を落とし、ディテールを最小限に抑えたオーバーサイズのリラックスニットたち。今シーズンは英国産ラムズウール、ソフトなボイルウール、モヘアアラン、アルパカ・メリノミックスなどの素材で、新たに展開します。ウール80%、モヘア20%のモヘア・アランで編まれたクルーネックニットは、メンズ、レディースともにウェイクマンのお気に入りです。「この糸の撚り具合がとても好きなんです。ネイビーとブラウンが一緒に撚り合わされていて、気分があがります。」とウェイクマン。
レディースのオーバーサイズベストPorosなどに充てがわれているハイロフトウールも、ブークレ素材のような質感のある雰囲気を醸し出しています。そして、24年ウィンターコレクションが撮りおろされた、スウェーデンの美しい海岸の風景を特に想起させるのが、アルパカ・メリノの混紡で編まれた、メンズのオーバーサイズ・クルーニットVico。darkest navyとnatural marlの独特な色調が私たちをスウェーデンの旅へと誘います。メンズ、レディースの両コレクションを通して、シンプルなカーディガンやハイネックニットに、一貫して取り入れられている、スーパーソフト・ボイルド・ウールも注目の素材です。メンズでは、すっきりとしたジップアップニットIwakiにも充てがわれ、独特の柔らかさと厚みで私たちを包み込みます。
それぞれが強い個性で私たちの目を引くものの、全体を通して落ち着いた印象で展開する今シーズンのレディースのオーバーコートたちも、注目に値します。ドロップカラーでオーバーサイズに仕上げられ、目を奪われるようなチェック柄のDenali。そのダブルコットンの生地感はウエストのベルトで引き締められ、すっきりとした印象に。再生素材のダブルツイードで組まれたコートWeirは、カッチリとしたショルダーと構築的なスリーブで、圧倒的な存在感を放っています。さらに、スタジオニコルソンのベストセラーで、流れるような動きが美しいメルトンウール素材のオーバーサイズクラシックコートRiaには、この冬新たにblack、dark navy とespressoの3色が登場しています。
その他にも、レディースで注目すべきアイテムが多数登場しています。例えば、ノーカラー仕上げのブレザーJoyceや、機能性豊かなベルテッド・シャツドレスのMor、ボクシーなドレープが魅惑的なトップEmmetなどはその一例でしょう。スタジオニコルソンのベストセラーの一つ、Dordoniパンツをスカートに落とし込んだCarsonも外せないアイテムです。Carsonはblackとgreyの2色展開で、美しいプリーツが生み出すボリュームによって、鈴を想起させる立体的なフォルムが特徴的。これらの個性的なセパレートピースは全て、今シーズン新たに登場したアイテムや、既存のスタジオニコルソンのワードローブで見事に活躍できるように計算され尽くして、デザインされています。