スタジオニコルソンを愛する様々な人へ、一問一答形式でインタビューを行う企画
“パッシング・ポインツ” シリーズで今回取り上げるのは、英国デザイン・カウンシルから新進気鋭の若手建築家の一人として指名され、英国デザインの未来を代表する存在として称賛されている、ベニ・アランです。RIBA(Royal Institute
of British Architects / 王立建築家協会)のアンバサダーでもあるベニは、2017年に自身の建築やデザインのプラクティスをアウトプットするスタジオEBBAを設立しました。そこでは、臨機応変なアプローチを取りながら、パブリック・エンゲージメントを通して積極的に公共の問題へ関与し、環境や社会を考えた責任ある素材の使用に重点を置く活動を行なっています。そんなベニに、彼のモジュラー・ワードローブのインスピレーション源となっている様々なことについて聞きます。
PASSING POINTS - BENNI ALLAN
もし、あなたのワードローブが自ら意志を持って話せるとしたら、あなたについてどんなことを話すと思いますか?
僕のワードローブはきっと、「そんなに真面目にならないで!」と僕に声をかけるでしょう。僕は建築家として、またスタジオのディレクターとして、さまざまな仕事に臨機応変に対応できる柔軟なスタイリングを常に心がけています。ただ、僕は心の奥底では、デザインや制作のプロセスを遊びの一種としてとらえながら仕事を進める、いわば大きな「子供」でもあるんです。その意味で、僕の選ぶ服にもう少し遊びがあっても良いのかもしれません。
私たちが真に衣服を楽しむために、服の「形」や「フィット感」、「素材」は外せない重要な3つの要素ですが、それはいったいなぜでしょうか?
僕はとても活動的な日々を送っています。自転車で、ミーティングや現場の視察へ向かい、そこからスタジオに戻り、夜になって友人たちと夕食を食べに行くまで、毎日飛び回っています。僕はその日のスケジュールに合わせて服を選びますが、自信を持って快適に着られるスタイリングであることが、実は最も重要です。それはまさに、「フィット感」や「形」、「素材」に左右されるものです。さらに、僕にとって譲れないことは、常に身だしなみが整っていること。サイクリングでたくさん走った後でも、体にしっくりとなじむものがいいんです。
もしあなたが今、お気に入りのスタイルヒーローに会えるとしたら、それは一体誰でしょうか?
そうですね、常に物事を難なくこなしているような、エフォートレスなスタイルの人が数名思い浮かびました。なかでも、ファレル・ウィリアムスのように、そのユニークなスタイルで、年を重ねることの意味を根本から問い直すような類の人を、僕はリスペクトしています。他にも衣服のデザインに、建築と彫刻の要素をミックスさせたようなパターンを取り入れている、クレイグ・グリーンの仕事やスタイルも胸に浮かびました。
着こなしが最も楽しめる季節を、ひとつだけ選ぶとしたら、それはどの季節でしょうか?
僕が一年で最も好きな季節は、間違いなく「秋」でしょう。軽装でもまだまだ十分暖かく快適なのに、同時にジャケットや薄手のコートを羽織ったコーディネートも楽しめる季節だからです。僕は、普段はモノトーンでまとめたスタイルを好んで組むので、そこに僕の遊び心を引き出してくれるような派手なアイテムを取り入れるのが好きなんです。意外に思われるかもしれませんが、実は平坦な日常に大胆な色を取り入れるための「口実」は、季節であれ何であれ、僕にとっては心強いものです。もちろん、同時に何色も取り入れて冒険する、ということではありませんが。
あなたが考える、優れたモジュール式ワードローブの要件をいくつか挙げてみてください。
僕は以前から、僕たちの日々の行動がどの様な影響を世界へ与えるのか、について強く意識してきました。なので、僕は新たにワードローブを作りあげていくプロセスも好きですが、同時にあらゆるミックス&マッチが可能な、上質なアイテムの定番コレクションを持ち続けることの可能性も追求するべきだと考えています。実際のところ、僕は品質にこだわることで、本当に必要なものは何かということをよりよく考えるようになりました。優れたモジュール式ワードローブに必須のアイテムとしてあげられるのは、きちんとしたユーティリティ・パンツが数本、体にフィットしたTシャツが数枚、大胆で汎用性の高いジャケットが数着でしょう。