スタジオニコルソンは創業から一貫して「女性らしさ」や「男性らしさ」など、性差にまつわる、ありふれた考え方を踏襲してきませんでした。多くのブランドがいまだに男女の境界線を明確にしたがるなか、創業者でクリエイティブディレクターのニック・ウェイクマンは両性の違いを強調するのではなく、むしろ両性がより融合された対等な関係にある、という考えでクリエイションに挑み、そこから刺激を得ながらものづくりに取り組んできました。
こうして、スタジオニコルソンが世に放つ世界観や言葉、メッセージや色使いに至るまで、全ての要素が万人に響くアンドロジナスなセンスをまとうのです。ウェイクマンのこの姿勢は創業当初から変わらず、まるでブランドをつかさどる、ある種の方程式のように機能しながら、全コレクションに共通して見られる特徴です。
アンドロジナスはラテン語の「アンドロジーン」に由来することば。男性と女性の特徴の融合を指します。ハードなものとソフトなもの、両者の良い部分を一つの美学にまとめる手段として、また同時に社会の既成概念に反抗できる、まるで魔法のようなことばです。このことばの向かう先は、ステレオタイプな着こなしを避け、男女を区別するあたかも時代遅れなボーダーラインを突破すること。こうすることで、私たちは新しい、自由なスタイリングを手にすることができるのです。それは、常識と言われている感覚から解き放たれ、例えば異性のユニフォームにインスパイアされた服装に身を包み、出かけることのような、自由を与えてくれる考え方です。
他にも、服にボリューム感を持たせることで、今まで注目してこなかった体のパーツに目を向けることができます。オーバーサイズのシャツをボリュームのあるパンツにインして、絞られたウエストに目線を集める。大きなニットの襟を抜いて首筋を見せたり、袖口のボタンを外して袖をまくり上げ、手首や時計、ジュエリーに視線を向けるのも良いでしょう。シャツはデコルテを強調しますし(これはジェーン・バーキンが見事にやってのけています)ワイドデニムは足首を露呈させることで、ワークウェアのような古臭さが払拭されます。