新たな世界へと踏み出す、一歩。自信が溢れる服を身にまとうことで、その一歩が力強いものになります。スタジオニコルソンのファウンダー、ニック・ウェイクマンは、AW22に向けて、私たちのワードローブをエキサイティングに保つために、必須と考えられるエッセンスを全て抽出しました。重要な要素だけを残し切り詰める方向性で、今シーズンは豊かな色彩と、着用時の快適性やのびやかな想像力がまるでカクテルのように混ざり合う、スペシャルなコレクションに仕上げています。
1980年代の労働者が思い描くユートピアとその夢を表現し、幅広のシャープなシルエットで今季のムードを作り出した、ウェイクマン。都会的な洗練を象徴した、1980年代後半のニューヨーク。この街をヒントに、ウェイクマンはモジュラーワードローブをスマートに再定義し、今季のコレクションで表現しています。ニューヨークの広い歩道から発せられる独特のエネルギーや、早口でまくしたてられるサクセスストーリーたち。ラグジュアリーでありながらハードワークを可能にしてくれるファブリックを、秋のセントラルパークらしいカラーパレットで構成したコレクションです。(思い浮かべて欲しいのは、ラズベリーアイスクリームを食べながら、秋のセントラルパークをそぞろ歩きするようなムードカラーです。)
ウェイクマンの打ち出す洗練されたデイウェアには、1988年の大ヒット映画『ワーキング・ガール』に登場する象徴的なシェイプもいくつか登場します。この作品では、主演のメラニー・グリフィスとシガニー・ウィーバーの2人が、スポーツウェアをワードローブに取り入れて、タイムレスなクラシックウェアの概念を一新しました。かつて、トレンチコートや、タイツ、スニーカーが何のためらいもなく素直にミックスされた時代を称えるコレクション。今季は、こういった類の機能的な繊細さが見事に表現されています。まるで英雄のような、たくましい姿勢で表現されているのは、究極の都会的エレガンス。加えて、誰も値踏みできないような、強い女性的な美しさです。いわゆる「グッドテイスト」のあらゆるコードに意図的に逆らうポジティブな無頓着さと、様々なスタイルの互換性を要としたAW22。スポーツウェアとテーラリングがタッグを組んで、共に表彰台の一番上を飾ったコレクション、とも言えるでしょう。
彫刻のようなボリューミーなアウターウェアが織りなす、シャープな角度を打ち消すように、度々登場するウエストのくびれ。コレクション全体に遊び心を散りばめながら、同時にパワフルな姿勢を見せる、シリアスなセパレートたち。ドライウールツイルの丈夫なペンシルスカートに重ねられるのは、業務的な強度を感じさせ、完全に露出したジッパー。ここでは、洗練された反骨精神によって、様々な遊び心が歓迎される、そんな様子が表現されています。ソフトな起毛イタリアンコットンのシャツには、ポップスターが着用する格子縞が登場し、足首が露出するすっきりとしたスレンダーなパンツにタックインされます。
今季のカットはかつてないほど長く、細く変化することで、より一層ボディを称えながら、エレガンスを放つようになりました。自由自在に扱いやすい素材で、まさに秋らしい実験を私たちに促しながら、高度なレイヤリングを実現。1980年代特有の悪びれないファッションが引き起こすポジティブな混乱を参考にしながら、洗練とみなされる要素をあえて取り入れない姿勢で、スタジオニコルソンはレディースウェアの美学に新たな息吹を吹き込みました。
コレクション全体に散りばめられたニットのアクセサリーは、コレクションを締めるというおおかたの役割に背を向けて、あらゆるルックを形成する、重要な要素として登場。裾が開くウールのレギンスはリブ編みでふくらはぎを強調し、靴の中に入れ込まれる代わりに、靴の上に被さるようにデザインされています。手袋は長めで、ニットのスヌードフードは、さながら宇宙レースか、リレー選手かのような雰囲気を醸し出しています。エコダウンは、ボリュームを強調し、リサイクルナイロンのジャケットなどでドラマチックに演出。襟を立てたり下げたりして注目の的となるアイテムです。今季のカラーパレットは、フィルムを想起させる質感で、痛烈な感覚を呼び起こしながら、同時に反逆的で、ルールフリーな印象を与えるもの。これらは、アクティブな姿勢とアーカイブの良さを見事に融合しながら、テクニカラーを受け入れてきた社会一般に向けて作られた、「フルタイムのヒーロー・モジュール」とも言えるでしょう。多様な選択肢から自ら選択する、今季の新たなモジュール式ビュッフェはまさに、スタジオニコルソンにふさわしい、強く知的に洗練された女性のために作られたコレクションです。
LEANNE CLOUDSDALE IS THE STUDIO NICHOLSON
EDITOR-AT-LARGE | PHOTOGRAPHY BY NIKKI MCCLARRON | VIDEO BY SAMUEL HOOPER